日本の農家は年々減少しています。花き販売農家は2000年には88,000軒ありました。それが2020年には58,000軒という衝撃の数字となっています。そのような中で、24歳という年齢で農業法人を起業した若者がいます。今回は株式会社MIYASHOの代表である宮川信之氏を取材し、これまでの体験やこの先の展望について語ってもらいます。
起業と生産
最初は経営も生産も初めてのことだったので、軌道に乗るまでは試行錯誤の日々でした。農家が減っている、お花の消費量が減っているという現実がある中で、一からの立ち上げに不安はありました。ですが企業理念である『お客様に価値のあるお花作り』はこの先の花き農業、ひいては花き業界全体に必要な事だと信じて頑張ってきました。
経営学に関しては大学で基礎を学び、今はお客様やグループ会社の経営陣に学んでいます。就学中の起業ということで最初は勢いという部分もありましたが、皆さまのお力添えがあって5周年を迎えることができる会社となりました。
お花については祖父がバラ農家だったので無知ではありませんでしたが、スプレー菊に関しては右も左も分からない素人でした。独学では限界があるため、スプレー菊の出荷量が日本一である愛知県で勉強しました。
自慢できることでは無いですが、これまでも何本もの苗をダメにしてきました。お花は工業製品ではないので、休みなく見てあげないと上手に育ちません。天候に左右されたり、害虫に気を付けたりと、、、品質を保って出荷することが難しいのです。日々、温度管理や遮光・電灯による日長時間の調整をしています。一つミスをすると一面同じように育ってしまいます。起業から4年経ちましたが、「同じ」ということがないので毎日が勉強です。お客様の支えがあって一年を通して出荷ができる段階まで来れたと日々実感しています。
ニーズを形に
生産者の多くは市場への出荷が基本で、JAさんなどを挟んで共選という方法を取る人もいます。【生産(共選)→市場→(仲買)→お花屋さん→お客様】という流れです。そこをMIYASHOでは【生産→仲卸(グループ会社)→お花屋さん→お客様】というスタイルを取っています。グループ会社から情報を得て、お花屋さんが「欲しい」お花を生産しています。どのような品種が人気があるのか、どのような仕立てがお使い頂きやすいのかなどをリサーチしています。いかに求められるクオリティに近づけるかが存在意義であると自負しています。
品質についてもお花に負担をかけないように、採花してすぐ出荷できる体制を整えました。脱葉・水揚げ処理をした状態で出荷するため、鮮度の良さに自信があります。等級も上位メジャー産地に合わせていますので、安心してお使い頂けます。
強さを最大限に活かして生産拡大を目指す
弊社の農場ではひと月に2回のペースで苗を定植しています。本数にすると6~8万本です。定植から採花・出荷という流れを3か月で繰り返しています。各ハウスで出荷が途切れないように調整して年間89万本という数になります。
この先の展開ですが、もちろん生産しているスプレー菊の品質向上・出荷増量を目指していきます。ただしスプレー菊だけに留まるつもりはありません。小菊や洋花など、お客様に求められるお花なら何でもチャレンジしていく予定です。個選だからこそできることがまだまだあります。お客様のニーズに合わせて会社を進化させていく、生産者でありながら変化に対して柔軟であること、それがMIYASHOの強さです。
生産者としてサスティナブル社会に向き合う
今は生産者として、法人企業として環境との接し方が問われる時代です。MIYASHOではグループ会社のお客様にご協力頂きながらサスティナブル社会を実現させるための活動を行っています。SDGsの項目である〈つくる責任 つかう責任〉を「Flowers, Rebirth プロジェクト」として実践しています。地産地消によるCO2削減や、お葬儀などで飾り終わったお花を生産のために堆肥として再活用しています。作り手としての責任も果たしていき、この先もお客様に喜んでお使い頂けるお花を生産していきます。
略歴
株式会社MIYASHOは神奈川県平塚市でスプレー菊の生産を行っている。
創立は2016年。代表を務める宮川信之氏が農業学校在学中に設立。
現在、自然豊かな湘南の地で年間89万本の苗を定植する。2700坪(ハウス1700坪、露地1000坪)という面積で周年栽培を可能とし、神奈川県で一番の出荷量を誇る。
生産品種:パレット・オンシア・アリエル
グループ会社:株式会社ザ・ネクスト・ワン、株式会社ザ・ネクスト・ワン東京
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