新型コロナウイルスは2020年のアメリカにおける死因の第3位となり、人との関わりが一変したことで冠婚葬祭業は大きな影響を受けました。今回はアメリカのブライダルに続き、コロナ禍が花き需要の高い葬儀業界に与えた影響を紹介します。
(参照:「Products – Data Briefs – Number 427 – December 2021」「CDC COVID Data Tracker」)
コロナ禍で葬儀業界が受けた影響
日本と同じく、アメリカの葬儀社もコロナ禍によって多くの影響を受けました。
ウィスコンシン州ブルックフィールドに本部を置く、世界最大規模の葬儀協会であるNational Funeral Directors Association(以下、NFDA)は会員に対して調査を行い、「2021 NFDA Cremation & Burial Report」を発行しました。
それによると、新型コロナウイルスによる死亡率の上昇のため、主に大都市圏の感染率の高い地域にある葬儀社、火葬場、安置所では一時的に需要の急増が見られました。
しかし、葬儀社の提供するサービス数が平均して増加しても、単にプラスとなるわけではなありません。感染症対策のためのコストや、ソーシャルディスタンスによって式に人を集めることができなくなるなど、コロナ禍が2020年~2021年の業界収益を減少させる要因にもなりました。
これらに対応するため、多くの企業と同様に、葬儀社もパンデミック時には運営方法を変え、スタッフや家族にマスクの着用などのガイドラインを義務付けました。さらに一部の葬儀社は、オンラインでの打ち合わせ、サービスのウェブキャスティング、近親者のみの葬儀、規制解除後に行われる追悼式プラン、ドライブスルー葬儀など、さまざまな方法を提供しました。
展望
NFDA会員の約60%がコロナ禍以降に火葬率が上昇したと回答しており、NFDAは、2035年までにアメリカの各地で火葬率が50%を超えると予測しています。消費者の間で火葬を選ぶ人が増えている理由には、資金の問題、環境への配慮、火葬を禁じる宗教上の制約緩和、シンプルで儀式化されていない葬儀を望むといった好みの変化などが考えられます。火葬は埋葬よりも費用が抑えられるために需要の拡大が見込まれ、2040年には火葬率は78.4%、埋葬率は16.0%に達すると予測されています。
アメリカではブライダルも葬儀も、新型コロナウイルスによる影響は大きなものとなっています。日本でも同様に費用をかけない式が求められる傾向が強まっており、シンプルなプランが流行しています。この先も、消費者の変化に対応できる柔軟さが求められることは間違いありません。
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