花き栽培農家の『現状と展望』

お花の農家の現状と今後について、以下のような疑問をお持ちではありませんか?

  • 農業全体の就農者数は減っているみたいだけど、花き業界だけで見るとどうなの?
  • 今後、花き業界の就農者数は増える見込みはある?
  • 花き業界はコロナ禍でどのように変わっていく?

この記事では、お花の農家についての生産者数などの推移から、コロナ禍での変化のポイントなどについてもお伝えします。

お花の農家の現状

先日、全国で農業に従事している人の数が152万人で、5年前に比べて約23%、人数にして約45万人減ったことが全国の農林業関係者を対象とした調査「農林業センサス」の結果から分かりました。また、農業従事者の平均年齢も67.8歳と、前回の調査より0.8歳上昇しており、農業従事者の高齢化が一層進んでいるといった現状も見られました。

花き生産者数

花きの産出額は、農業全体の約4パーセントを占めていますが、花き栽培に割かれている農地の面積としては、全体の約1%程度と言われており、稲作などに比べ広い土地を必要としないという意味では、花き栽培は、農業の中では比較的新規参入しやすい分野と言えるかも知れません。それが影響してか、花き農家の年齢は、稲作に比べ45歳未満の割合が高く、農業全体から見ると比較的若い世代が多く参入していると言えるでしょう。

出典:農林水産省「花きの現状について 令和2年11月」

しかし、花き販売農家数の総数は、徐々に減少してきており、平成27年には5.2万戸と、平成22年の6.7万戸に比べ約23%減少しています。

出典:農林水産省「花きの現状について 令和2年11月」

花き産出額と作付面積

花き生産者が減少していることもあり、花きの産出額は、平成10年の6300億円をピークに下がり続け、平成30年の時点では3600億円となっています。一方で、農林水産省は、花きの産出額を令和12(2030)年には4500億円、令和17(2035)年には6500億円とすることを目標として掲げています。また、花きの作付面積も、平成7年の48千haをピークに下がり続け、平成30年には26千haとなっています。

出典:農林水産省「花きの現状について 令和2年11月」

以上のことからも、今後、花きの産出額を増やしていくためには、若い世代の一層の新規就農が必要であると考えられます。

お花の農家の今後の展望

若い世代をいかにして取り込むかがカギ

花き農家を始めるには、農業学校などを卒業して花の栽培に関する知識や技術を身に付けて、農業法人などに就職してノウハウを学んでから独立する方もいれば、未経験から全国の新規就農相談センターなどに相談をして研修を受けて、花き農家を始める人もいます。また、花き農家を始めるには、知識や技術の他に土地や設備が必要なため、それらを準備する資金も必要となります。そのため、農業全体として、新たに就農を希望する方に向けての支援策なども豊富に用意されています。例えば、就農に向けた研修を受けるに当たっての支援金の交付や、設備機器取得のための無利子貸付金制度などの支援策や、後継者のいない農業者と就農希望者をマッチングするサービスなどもあったりと、若い世代の新規就農を促しています。それらの支援策が功を奏してか、毎年、新規就農者数はコンスタントに推移しているとは言うものの、2020年の農林業センサスの結果からも分かる通り、農業従事者の総数としては減少しており、また、平均年齢も上昇しているため、現状としては中々若い世代の就農に成果が出ているとは言い難いこともあり、農林水産省は、令和3年5月中旬に若い世代の就農促進対策を議論するため、検討会を設置することとなりました。

出典:農林水産省「令和元年新規就農者調査結果」

今後、更に、若い世代に向けた就農に対する支援や発信をしていくことが求められています。

花き業界にも多大な影響を及ぼしているコロナ禍

花き業界はイベントなどの業務用の需要が多く、今回のコロナ禍の影響で、卒業式や送別会、結婚式などのお祝い事やイベントが減り、行き場を失ったお花が廃棄される「フラワーロス」なども問題となる一方で、長引くテレワークや自粛などが相俟って、ガーデニングや自宅内に飾るお花の需要は、増加している傾向があるようです。しかし、実は、コロナ禍以前から国内の花きの消費額は減少してきていました。それには、若い世代の消費の減少などもありますが、そもそもの花きの流通の仕組み上、最終的な小売り単価が高くなってしまう傾向があり、嗜好品であるお花まで消費が回らなくなっている現状もあったかと思います。

出典:農林水産省「花きの現状について 令和2年11月」

しかし、今回のコロナ禍で、オンライン販売などの需要が伸び、最近では、市場と消費者が直接取引できるサイトなども立ち上がっています。そのことにより流通がスリム化し、マージンが膨らむことによるいわゆる「マージンロス」や、輸送コストの問題などが解消され、より安価で高品質なお花を消費者に提供できれば、一般消費者のニーズも伸びるかも知れません。お花は嗜好品なため、価格だけでなく、付加価値や品質も大切ですし、消費者に飽きられないよう常に新しいお花を栽培していく「育種」も求められます。このように、今回のコロナ禍を機に、流通構造が変われば、お花の農家にとっても、今よりも安定した収入が見込めるようになり、結果として新規就農者数の増加にもつながるかも知れません。

お花の農家まとめ

お花の農家市場の現状と今後の展望についてまとめると以下のようになります。

  • 花き業界は、生産者、生産額、作付面積全てにおいて減少傾向にある
  • 農林水産省は、花き産出額の増加を目指して活動している
  • 若い世代の就農や花き販売のオンライン化の伸びが今後のポイント

以上、ご参考ください。

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