『葬儀業界の現状と今後の展望』死者は2040年まで増え続けるのに、業界売上は下がるのか?

葬儀業界について、以下のような疑問をお持ちではないでしょうか?

  • 国内の死亡数は増えているのに、葬儀業界の売り上げは伸びてないの?
  • 葬儀の平均単価が下がっていると聞くけど、どのような原因が考えられる?
  • 異業種からも葬儀業界に参入してきている企業は多いと聞くけど、競争は激しいの?

この記事では、葬儀業界の売り上げや平均単価に関することから、今後の展望についてお伝えします。

葬儀業界の現状

高齢化社会に伴い、通年の死亡数は今後も増加することが予想されており、売上もそれに伴って伸びるというイメージが強い葬儀業界ですが、果たして、実際はどうなのでしょうか?

葬儀業界の売上推移

まずは、国内の死亡数を見ると、出生数の低下に反して死亡数は年々増加しており、2040年に年間の死亡数は168万人となり、ピークを迎えることが予測されています。

出典:令和2年度版「高齢社会白書」

死亡数が増加しているという事は、葬儀業界自体の売上高も比例して伸びているのでしょうか?経済産業省が毎年発表している「特定サービス産業動態統計調査」の葬儀業のデータを見ると、葬儀業の売上高は、2017年の約6100億円をピークに徐々に低下傾向にあり、2020年はコロナ禍の影響から葬儀の簡素化や縮小が見られ、葬儀業の売上高は前年に比べ約15%減少しました。

「特定サービス産業動態統計調査」を基にグラフを作成

2020年はコロナ禍という特殊な要因があり、取扱件数、売上高共に減少しましたが、それ以前の売上高の減少については、取扱件数自体は徐々に増加しているため、平均単価が下がっていることが原因と考えられます。取扱件数は今後も増加することが予想されるため、平均単価が減少したとしても、このまま売上高が下がり続けるという事は考えられませんが、取扱件数の増加に比例して売上高も増加するとは言い切れない状況にはあります。

「特定サービス産業動態統計調査」を基にグラフを作成

平均単価が減少している理由

葬儀の平均単価が減少している原因としては、以下のようなことが考えられます。

葬儀の多様化

従来の一般的な葬儀に加え、最近では家族葬や直葬、散骨や樹木葬など、様々なタイプの葬儀が選択できるようになってきており、簡素で小規模な葬儀を望む人が増えています。

葬儀会社が選びやすくなった

これまでは、葬儀自体が急なことでもあるため、葬儀会社を比較して選ぶことが難しく、葬儀費用が妥当なのかどうかも判断できないまま葬儀を執り行うということも多かったことかと思います。しかし、現在はネット系の葬儀会社や葬儀会社の比較サイトなども増えてきているため、簡単に葬儀会社毎の費用や内容を比較出来るようになってきていたり、高齢者が終活などで予め葬儀会社を探して指定することも増えてきているため、価格競争が激しくなってきています。

人付き合いの希薄化

昔に比べご近所づきあいなども減ってきている現代では、知らない内に隣人の葬儀が執り行われていたという事も珍しくありません。また、高齢化に伴い、徐々に現役時代のお付き合いや関係性が薄れ、故人の親しい知人がいたとしても、その方も高齢で外出が難しかったりと、葬儀の際に連絡を取る人も限られた人になってきており、結局は家族だけで葬儀を執り行うという選択をする方も増えてきています。このように、業界を取り巻く環境としては、葬儀価格自体の低価格化や、簡易・簡素化により、平均単価が減少してきています。

葬儀会社の今後

葬儀会社を始めるに当たって免許などは必要なく、参入ハードルが低いこともあってか、他業種からの参入などもあり、競争は一層激しくなってきています。昔は、自宅で葬儀を執り行う事が一般的な時代もありましたが、時代の変遷と共に、斎場などで行われる葬儀が増えてきました。最近では、デジタル葬儀やオンライン葬儀などに取り組む葬儀会社も増えてきており、特に、今回のコロナ禍が追い風となり、オンライン葬儀の需要は外出が難しい高齢者を中心に増えていく事が予想されます。5000~8000社あるとも言われている葬儀会社の大半は中小零細企業ということもあり、価格競争に加え、時代の移り変わりにより求められるサービスの変化についていけない企業の倒産や淘汰が加速していく事が予想されます。

葬儀会社の現状と今後の展望まとめ

葬儀会社の現状と今後の展望についてまとめると以下のようになります。

  • 価格競争だけでなく、葬儀の簡素化も影響して平均単価は下がってきている
  • ネット系葬儀会社の台頭により競争も激化し、今後は業界の淘汰が進むと考えられる
  • 時代の移り変わりとともに葬儀会社が求められるサービスも変わってくる

これまでタブー視されてきた葬儀ですが、人々の意識も変わってきており、情報発信の仕方や提供するサービスも時代に合わせて変化していく必要がある業界と言えます。

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